piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

スーパーエッシャー展

渋谷のBUNKAMURA ザ・ミュージアムで開催されている、スーパーエッシャー展を観に行きました。面白かったので、簡単にまとめ。

MCエッシャー(1898-1972)は、オランダの版画家。現実にはあり得ない構図や、平面を埋めつくす鳥やとかげなど、特異な題材の作品で有名です。この展覧会は、ハーグ市立美術館の収蔵作品を中心に、どのようにしてこのような作風が生まれて来たのかを概観しています。CGアートなどの、これからのアートの現場への影響も視野に入れているらしい。

年末とはいえ平日の午後なのに、かなりの人出です。受け付けで、解説用の任天堂のDSとヘッドフォンを渡されました。画面を押すとその絵と解説が流れるというもので、わかりやすくて便利。


初めは、「身近なものと自画像」で、版画科の学生時代から卒業後暫くまでの作品。昆虫や風景の精密な描写、ホーヘウェルフによる短い詩のついた「24の寓意画」という作品が印象に残ります。「図式化された音楽」では音程を渦巻上の線分の角度で表していて、幾何学的な表現形式への傾倒が窺えます。J.S.バッハの音楽が好きだったそう。1925年に結婚したエッシャーは、ローマに住み始め、イタリアの風景を写し取って行きます。「夜のローマ」のシリーズなど、黒と白のコントラストが印象的。この時期を本人は、過渡的な時期であると考えていたそうです。

1935年、ファシズムの台頭してきたイタリアを離れ、スイスへ。スペインのアルハンブラ宮殿で見た、タイルのモザイク模様に用いられていた「平面の正則分割」に興味を持ち、これを題材にした作品を手がけていきます。何種類かの同じ形で規則的に平面を埋めてゆく手法ですが、その図形を動物などにし、明暗のどちらに注目するかで二つの物が見えるような不思議な構図も生まれました。正多面体を取り込んだものや、空間的な奥行きを表現した作品も好きです。

「特異な視点、だまし絵」では、現実ではありえないような構図の作品が展示されていて、エッシャーといえばまず思い出す絵が並んでいます。これまで見てきた作品を背景として見ると、奇を衒っただけではない、版画としての表現の可能性を追求する意気込みが伝わって来るような気がします。今までよりも更にエッシャーの作品が好きになりました。