piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

POWERS OF TEN

10の力、ではなくて、10の巾乗。Charles and Ray Eames の1977年の傑作映画で、EAMES FILMS なるDVDに収録されています。

公園でピクニックを楽しむ男女の場面からスタート、男性の手の映像から徐々に遠ざかりながら、画面の中に中に入る風景は10秒間に10倍ずつ大きくなってゆきます。やがて地球をすっぽりと納め、太陽系を、銀河系をも飛び出して、さらにその彼方へ。銀河さえも点のように小さく眺めるような視点まで行ったところで、再びスケールを下げてゆき、今度は小さなスケールの世界に飛び込んでいきます。DNA、原子のスケールを通りすぎ、ほとんど空っぽのような原子の中に原子核を見出し、更にその中へ。原子核を構成する陽子や中性子は、クォークから出来ていますが、そのクォークの領域まで辿り着いて、この旅は終わります。

宇宙全体を眺めるほどの大きなスケールの世界から、分っている最も極微の世界へ。我々のこの世界に対する理解の、最前線と最前線の間を結ぶ旅を、わずか9分間で駆け抜けます。私の研究対象は、その小さな方の端っこのあたりにある訳ですが、日常の世界とのギャップを、こんな見事な映像として目の当りに出来ると嬉しくなります。物理とか科学とか苦手な人でも、気軽に楽しめてかつ感動的な作品。

しかし、こういうスケールの違いを実感するのは、本当に難しい。我々の生きているのは、1mとか1分とか、そういうオーダーの世界で、それよりはるかに大きかったり小さかったりするスケールを、肌の感覚として捉えることは不可能なのかも知れません。不可能なら不可能で、そういう理解したつもりでも実感の出来ない世界には、独特の魅力があります。

本も出ていて、こちらもお薦め。ちょっとお高目ですが、それぞれのスケールについて、もう少し詳しく解説されています。