piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

中山良昭「日本百名城」

朝日文庫, 2004年。
日本の代表的な100の城を紹介。どういう戦略的な要請から築かれたのか、誰が縄張り(設計)をし、どのような運命を辿ったのかという、城にまつわるドラマが簡潔にまとめられています。カラーでもないし、写真も一枚もない無骨な構成ですが、各城の縄張り図があって、防御上の意図を理解するのに役立ちます。

城の建設が得意だったのは豊臣系の武将で、織田信長豊臣秀吉と続く天下制覇の過程で多くの築城や城攻めを経験したことによるものらしいです。特に築城名人として名高かったのが藤堂高虎で、外様大名ながら家康の信任あつく、多くの城を築きました。徳川系の武将や大名は野戦に才能を発揮した人が多いのですが、世の中が安定してゆくにつれ、有事の場合の備えや領地の経営のために、築城の必要が生じました。そこで戦略的要地にはまず豊臣系の大名をあて、堅固な城を築かせた頃を見計らって国替えや改易を突きつけ、その後徳川系の大名を入れるという政策が取られました。

現在まで残る多くの城は、桃山時代の終わりから江戸時代初期に築かれたもの。これは徳川幕府が出した一国一城令によって、大名の領国につき一つの城を残して破却することになったため、領国経営に便利な城下町の城などが残されたことによるようです。しかし戦国時代から安土桃山時代の戦乱の中で活躍した城も、その歴史をたどるのは興味深いものです。この本では有名どころだけではなく、知られざる名城なども登場して、城巡りへの興味をかきたてます。