piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

澁澤龍彦「胡桃の中の世界」

河出文庫, 1984

昨日、9月30日は「くるみの日」だったので、「胡桃の中の世界」を読み直してみました。澁澤龍彦と言えば、私はこの作品が真っ先に頭に浮かびます。古今の文物を渉猟しながら、寄せてはかえすイメージの波と戯れるこのエッセーが、一番のお気に入りです。

特に好きなのが、「プラトン立体」。プラトン立体とは正多面体のことで、正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の五種類に限られます。プラトンの宇宙観やケプラーの神学的宇宙論にこのプラトン立体が果たした役割、分子生物学者のモノーによる自然物と人工物の基準などを引き合いに出しつつ語られる、この美しいシンメトリーが紡ぎ出すイメージへの耽溺に、引き込まれるのも一興でしょう。

プラトン立体の一つ、正二十面体を象った日時計が、エディンバラの宮殿の中庭にあるとのこと。その宮殿に二度も足を運びながら、それに気づかなかった自分の不明を恥ずばかりです。それにつけても対称性とは、人の心を惹きつけて止みません。

「胡桃の中の世界」目次:

  • 石の夢
  • プラトン立体
  • 螺旋について
  • 『ポリフィルス狂恋夢』
  • 幾何学とエロス
  • 宇宙卵について
  • 動物誌への愛
  • 紋章について
  • ギリシアの独楽
  • 怪物について
  • ユートピアとしての時計
  • 東西庭園譚
  • 胡桃の中の世界