piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

霧箱

霧箱というのは、粒子の飛跡を見るための装置です。イギリスの物理学者C.T.R.ウィルソンが発明、1911年に放射線の飛跡を写真に撮ることに成功し、1927年にノーベル物理学賞を受賞しました。霧箱宇宙線放射線を観測する装置として活躍し、アンダーソンによる陽電子の発見など多くの物理学上の発見に貢献しました。

原理は次のとおり。
まず、気体を過飽和状態にする必要があります。過飽和状態とは、気体が無理して気体でいるという状態で、何かのショックによって液体状態に変わります。過飽和状態の気体の中を電荷を持った粒子が飛ぶと、気体の分子の中の電子を跳ね飛ばしてイオン化し、このイオンの回りで気体は液体となって霧滴を作ります。このため、粒子の飛ぶ経路に沿って霧状の飛跡が出来るので、ライトを当てて観測します。

過飽和状態の作り方によって、気体を断熱膨張させる膨張霧箱と、温度勾配を利用する拡散霧箱があります。ウィルソンが開発したのは膨張型でした。霧箱は現在は専ら教育用に利用されていますが、その際には作るのも観測するのも簡単な拡散型が用いられます。

まず密封した透明な容器の上の方に、アルコールなどをしみ込ませた綿などを配置して、それが空気中に蒸気として蒸発してゆくようにします。容器の下の面をドライアイスなどで冷やすと、容器の中は下にゆくほど温度が低い状態になります。蒸発したアルコールは、下に向かって拡散していきますが、その際に冷やされていきます。温度が低いほど蒸気でいられるアルコールの量は少ないので、どこかに無理して気体でいる状態、過飽和状態となる領域が出来ます。ここを電荷を持った粒子が通過すると、上で説明した原理によって霧状の飛跡ができます。