piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

日本物理学会編「宇宙を見るあたらしい目」(前編)

日本評論社, 2004年。
最近発展著しい、観測的宇宙論のフロンティアを概観しています。10章の、各分野の第一線の研究者による解説から構成。レベルは大学生くらい向けかと思われます。

各章の内容(括弧内は執筆者):

  • 宇宙マイクロ波背景輻射で見る宇宙 (小松英一郎)
    宇宙の晴れ上がり以来、宇宙を飛び続けている背景放射を調べることによって、ビッグバン直後に何が起こったかを知ることができます。そのために打ち上げられた観測衛星、COBEとWMAPが何を明らかにしたのかを、WMAPプロジェクトに参加する著者が解説。
  • X線で見る宇宙 (大橋哉)
    X線で見た宇宙は、可視光とは違った姿を現します。しかしながら地上ではX線が大気によって吸収されてしまうため観測が難しく、ブラックホールや活動銀河、銀河団などの、X線を発する天体現象の解明には衛星の打ち上げが不可欠です。日本の「あすか」、アメリカの「チャンドラ」などの成果を紹介し、Astro-E2(打ち上げ後「すざく」と命名)計画の目指すことなどを紹介します。
  • ガンマ線で見る宇宙 (谷森達)
    背景放射、可視光線、X線は共に波長の違う電磁波(光)ですが、X線よりも更に波長の短いのがガンマ線です。宇宙線の中には非常に高エネルギーものがありますが、これがどのようにして加速されたかを解明するために、このような宇宙線が放射するガンマ線を観測することは重要です。このような加速を起こしている候補は、銀河内では超新星残骸であり、銀河外では活動銀河核です。このような天体からのガンマ線を観測するために、ガンマ線衛星や、大気を検出器として利用したチェレンコフ光望遠鏡(CANGAROOなど)が開発されています。
  • 重力波で見る宇宙 (三尾典克)
    一般相対性理論によって予言され、中性子星連星の観測から存在自体は確認された重力波は、あまりに微弱なために直接観測は困難でした。しかし現在の技術では、その観測が可能な段階が来ていると考えられ、アメリカのRIGOやヨーロッパのVIRGO、日本のTAMAなどの計画が進行中です。
  • 最高エネルギー宇宙線 (手嶋政廣)
    宇宙を飛び交う宇宙線の中でも最高レベルの宇宙線は、10の20乗エレクトロン・ボルトものエネルギーを持っています。しかしながら、そのようなエネルギーを生じるような加速天体はほとんど知られていないこと、背景放射との散乱によって存在する理論限界より高いエネルギーの宇宙線が観測されていることなどから、その起源には多くの謎が残されています。活動銀河やガンマ線バーストなどの候補となる天体を調べるために、高エネルギー宇宙線が生成する空気シャワーを観測する、日本のAGASAなどの観測プロジェクトが進行中です。

力尽きたので、続きは明日。