piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

杉浦日向子「百物語」

1995年、新潮文庫、単行本は1988, 1990, 1993年。
漫画家というよりも絵師と呼ぶに相応しい杉浦日向子さんの、百物語(語られるのは99)。一つ一つの物語は他愛もなくてさして怖くもないけれど、時々すーっと背筋が寒くなるようなのも混じっています。江戸人の、怪異との距離感の取り方が心地いい。踏み込むでもなく、拒絶するでもなく、すぐ傍にあるものとして受け入れているような。

狂言回しのご隠居の、「あと三百年も寿命があれば、少しは物事が解るようになるやも知れぬがの」という台詞が沁みます。我々も、あと三百年くらい生きれば、この世界との距離感を自然に取れるようになるのかも知れません。

一杯飲みながら読めば、何か不可思議に出くわすような気分になる作品でした。