piyopiyo diary

幸せまで五十歩百歩。

渡邊香春子「調理以前の料理の常識」

講談社, 2004年。
料理の基本は、レシピを守ること。しかしレシピを読んでも、え、カップ一杯ってワンカップ酒のコップでいいの?なんていうレベルの人もいます(そりゃ私だけか)。そんな料理初心者が知ってないといけない基礎的なこと、覚えておけばひと味上の料理が作れるようになりそうなことが詰まった本です。

料理本、けっこう好きです。料理はほとんどしませんが。なんか読んでいてワクワクしますよね。こういう料理の基礎編には、長い長い間に培われた知識が、簡潔な形で詰め込まれています。坂口安吾に「ラムネ氏のこと」という短評があって、それに、例えばふぐが今日食用となるに至るには数多くの犠牲があったに違いなく、そのような名も知れぬ人々の積み重ねによって我々の文明は成り立っている、ということが書かれています。料理とはまさにそのようなもので、ちょっとしたコツにも先人の創意と工夫が反映されていると思うと、落し蓋ひとつにも感慨が湧いて来ます。

ファミリーレストランの厨房でアルバイトをしてたので、それなりに料理の経験はあるのですが、その頃割と機械的にやっていたことの理由がちゃんと判りました。今は、こういう本の解説やレシピを読みつつ、料理をしてる気分をつまみに酒を飲むとのもオツなもの。

料理を突き詰めてゆくと、科学の世界が見えて来ます。例えば「さしすせそ」の順番も調味料の科学的性質が理由で、それを経験則にとどめるか、もう一歩踏み込むかの違い。ビタミンの発見も、「味の素」の発明も、経験則と科学との幸福な出会いといえるでしょう。科学の方から料理(を含めた家庭生活一般)を眺めたものとしては、内田麻里香「カソウケンへようこそ」(講談社, 2005)がお勧めです。